2 : 04 一角獣の歌

← 2‒03 p↑ もくじ i 2‒05 n →

一角獣の歌

2001年 1月16日
記事ID d10116a

かが・うぃさーな(妖精訳)

分析する者の分析の楽しみをじゃませず、
笑う者に笑いのネタ、
無視する者に無視のネタ、
いかる者にいかりのネタを与えつつ、
さまよえ、ひとりで、ユニコーン。

むきになって、あやつろうとせず、
あやつらないことに、こだわらず、
何も残さなくてもいいでしょう、
ましてやこころなんて。
さまよえ、ひとりで、ユニコーン。

世の中には楽しいことがいっぱいで、
楽しいことには退屈がいっぱいで、
さめた物言いの裏にある地獄の履歴を忘れず、
さまよえ、ひとりで、ユニコーン。

「人への親切、世への貢献が生きることだ」なんて
自己をあざむかず、
自己をあざむかないことを言い訳にせず、
「価値」の多義性を越えて、
さまよえ、ひとりで、ユニコーン。

竹林の根のように、からまりあう、
さまざまな、おもわく。
からまりあう思いをセキュアな空間に仮想化し、
実体においてこそ、
さまよえ、ひとりで、ユニコーン。

野生の鹿のように、束縛されず、
餌を求めて、行きたいところに行くが良い。
外から束縛されない自律の恐怖を価値となし、
さまよえ、ひとりで、ユニコーン。

仲間だ、身内だ、友だ、味方だと群れるなら、
出家であれ、在家であれ、
群の論理にとらわれる。
君は、本当に一人で、この歌は嘘なのだから、
さまよえ、ひとりで、ユニコーン。

仲間と楽しく、親切に、心をこめてつきあいながら、
それをひとつの真実だと尊重しながら、
群の暖かみをいとおしみながら、
人間を深く信じて、
さまよえ、ひとりで、ユニコーン。

理屈をこねず、理屈をこねないことにこだわらず、
自慢をせず、自慢をしないことにこだわらず、
規範にとらわれず、「何ものにもとらわれない」というポーズにこだわらず、
孤高を演じず、気さくを演じず、
高貴で清冽な沈黙に入ろうとする安易な誘惑を退け、
おしゃべりによって、
すべてを見せ、あばきつくすことによってこそ、

この行が書けないからこそ、わたしは、ある。

この記事のURL



メールアドレス(画像)