1 : 22 真近点離角と離心近点離角

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ケプラー方程式(微積・三角公式を使わないアプローチ)

2018年 1月14日
記事ID e80114

微積分を使わず、算数的にケプラー方程式を導く。倍角・半角などの公式を使わずに、離角の関係を導く。特別な予備知識は不要。

[1/3] ケプラー方程式

ケプラーの法則によると、一定時間に地球が軌道上で「塗りつぶす」面積は一定。次の図の黄色い部分の面積が、一定の割合で増えていくという。

画像1 (6 KiB): 長軸が水平、短軸が垂直になるように置かれた黒い楕円。その中心をO、長軸の両端をAとW(Aが図の左)、短軸の両端をBとB′(Bが図の上)とする。W側にある楕円の焦点をSとする。楕円上の点Pを考える(図では∠WSPは約60°)。Pは反時計回りに楕円上を動く。WS・SP・楕円が囲む扇形のような領域が、黄色で塗りつぶされている。

図の黒い楕円が地球軌道。軌道上の P が地球。中央付近の S が太陽。W は、軌道上で一番太陽に近い点で、角度を測り始めるスタートラインに当たる。地球の現在位置を表す角度 v = ∠WSP真近点離角という。楕円の長半径(一番長い半径=図の横方向)を a、短半径(一番短い半径=図の縦方向)を b とする。

太陽 S は、楕円の中心 O とは少し違う位置(焦点)にある。このずれは、離心率 z という値(0以上1未満)で表され、OS 間の距離は az に等しい(離心率の意味は後述)。

太陽の近くでは v がどんどん増え、地球は高速に公転する(いっぱい動かないと、一定面積に達しない)。太陽から遠い場所では、ちょっと動くだけで塗りつぶされる面積が大きく増えるので、地球はゆっくり動く。

どうやって黄色の面積を求めましょう?

次のように、「楕円の扇形」WOP の面積(水色+黄緑+黄色)を求めて、三角形 OSP の面積(水色)を引き算すればいいでしょう(説明の都合上、最初の黄色の部分を「黄緑と黄色」に分割した)。

画像2 (13 KiB): 画像1の楕円に加えて、それに外接する赤い円、内接する緑の円を考える。半短軸OBを延長した半直線と、赤い円の交点をCとする。Pから長軸に下ろした垂線の足をTとし、半直線TPと赤い円の交点をRとする。∠WORをEとし、∠WSPをvとする。△OSPを水色、△STPを黄緑、WT・TP・楕円が囲む領域を黄色に着色する。

ここで赤と緑は、それぞれ楕円に外接する円、内接する円。「楕円の扇形」WOP は、「円の扇形」WORba の面積を持つ。というのは…

画像3 (10 KiB): 画像2の着色領域の最上部は楕円上のPだったが、それを外接円上のRに変えたもの。△OSRを水色、△STRを黄緑、WT・TR・赤い円が囲む領域を黄色とした。

水色と黄緑について、それぞれ楕円バージョンを円バージョンと比べると、どちらも「底辺の長さが同じで、高さが ba の三角形」。楕円は「円の横方向を一定に保ったまま、縦方向を ba にした図形」なので、そうなる(| OC | = a, | OB | = b)。楕円のかけら(黄色の部分)についても、同様の理由から、円のかけら(黄色の部分)と比べて、面積が ba になっている。円の面積は「半径×半径×円周率」だが、楕円の面積は「長半径×短半径×円周率」。円・楕円それぞれの黄色い領域は、円全体・楕円全体から見て、同じ割合で切り取った「かけら」に当たる。

円の一部である普通の扇形 WOR の面積は、もちろん中心角 E に比例する。赤い円全体の面積は πa2。角度 E を「°」単位で表した場合、扇形の面積は:

ここでは「360°」を とする弧度法というシステムで、角度を表すことにする。その場合、扇形の面積は:

そこから引き算される水色三角形の面積は、底辺の長さ | OS | = az と、三角形の高さ TR によって決まる。直角三角形 OTR を考えると、三角関数【※】の定義から、TRa sin E に等しい(赤い円が半径 1 の単位円なら対辺は単純に sin E だが、赤い円の半径は a なので、その比率で辺の長さも拡大される)。

【※三角関数について知りたい方は、こちらの覚え歌を…。以下では、三角関数の定義とピタゴラスの定理を使う。】

「底辺×高さ÷2」の公式を使うと、水色三角形の面積は:

楕円バージョンの三角形や「楕円の扇形」の面積は、いずれも円バージョンの対応する図形の面積の ba に当たる。つまり、離心近点離角が E のとき、ケプラーの「塗りつぶされた面積」は:

  1. ba πa2E − ba a2z sin E2
  2. = abE2 − abz sin E2
  3. = ab2 (E − z sin E)

楕円全体の面積 πab を基準にすると、離心近点離角が E のとき、次の割合が塗りつぶされたことになる。

例えば、この値が 0.1 なら楕円全体の 10% が塗りつぶされ、0.2 なら 20% が塗りつぶされている。これは一定の割合で進む単純な現象だけど、塗りつぶされる領域が複雑なので、「塗りつぶしが 20% のとき、角度 E の大きさは?」といった問いに答えることは、難しい。

手掛かりを得るため、本物の地球とは別に「その位置を表す角度 M が、時間に比例して増加する」という理論上の地球を考えよう。この「架空の地球」は、本物の地球と同時にスタートライン W を出発し、一定の角速度で公転する。そして一周の所要時間は本物の地球と同じ(つまり平均速度が同じ)…と仮定する。リアルな地球は軌道上の位置によって角速度が変わるから、途中地点では「架空の地球」より前になることもあるだろうし、後ろになることもあるかもしれない。とにかく一周の所要時間はどちらも同じ、と仮定する。

塗りつぶし完了率は、時間に比例する。理論上の角度 M も、単純に時間に比例する。「角度 M2π (=360°) の何パーセントに達しているか」は、式 (1.1) が表す割合と一致し、次の関係が成り立つ。

角度を弧度法で表し、100%1 とすると:

この比を変形すると:

これがケプラー方程式。理論上の角度 M と、リアルな地球の位置を反映する角度 E は、このような関係になる。

右辺の引き算の意味をたどってみると、「塗りつぶされた面積は、だいだい楕円の扇形の面積と同じだけど、水色三角の分を補正してね」ということを言っている。水色三角形の底辺の長さは離心率 z に比例し、水色三角形の高さは sin E に比例するのだから、右辺第2項は、大筋ではこんな形になるだろう。「三角形の面積だから 2 で割る」ということと「360° とする」という定義の相互作用により、比例係数がきれいに約分された。

v180°360° の場合、角 E も同じ範囲になる(このことは図からも明らか)。この範囲では、最初とひっくり返しになって、水色のエリアが「太陽から見ると既に塗りつぶされているが、中心から見るとまだ塗られていない」状態になる。つまり「塗りつぶされた面積=楕円の扇形、プラス、水色三角」となる。けれど、この範囲では sin E が負になり水色三角が「負の面積」を持つ。そのため、結局ケプラー方程式は、そのまま成り立つ(右辺のマイナスが、実質プラスの働きをする)。

「黄緑エリア」は説明の便宜上の色分けで、計算には関係しない。角 v の大きさによって「黄緑」は黄色の一部になることも(最初の図の場合)、水色側になることもある。

天体力学では、中心角 E のことを離心近点離角と呼ぶ。中心角なのに「離心」というのは変な用語だが、天文学者にとって、太陽系の中心(重力の中心)は太陽付近。O は、その中心から離れた場所にある…ということらしい。

離心率は e で表されることが多い。「自然対数の底」と紛らわしいので、ここでは代わりに z とした。

[2/3] 楕円と離心率

ケプラー方程式 M = E − z sin E は、理論上の角度 M と、離心近点離角 E の関係を教えてくれる。M については、地球の公転周期から「1年で 360° だから1日では…」などと比例配分するだけだし、ケプラー方程式を使えば、そこから E も分かる。

けれど、それだけでは、肝心の v(太陽から見た本物の地球の位置)について何も分からない。天文計算などに利用するためには、E をさらに v に変換する必要がある。

画像4 (14 KiB): 画像2にもう一つの焦点Fを書き込んだもの。△OFB, △OSBは合同な直角三角形で、斜辺がa、高さがb、底辺がc。このaは長半径に等しい。SPの距離をrとする。

楕円という図形は、長軸(図の AW)上に2個の焦点を持つ。地球の楕円軌道について言えば、焦点の一つは太陽 S。反対側にもう一つの焦点 F がある。中心と焦点の距離 | OS |c としよう(楕円は左右対称なので c = | OF | でもある)。

そもそも焦点とは何だろうか。それは、楕円の持つ次の性質と関係している。

「楕円とは、そういう性質を持つ図形のこと」「距離の和を測る基準となる2個の点が焦点」…と定義することができる。

これを感覚的に確かめる一つの方法は、ひもか糸で輪を作って、紙の上でその輪の中に2本指を突き、一定の張力でピンと張った場合に輪がどこまで達するか調べること…。反対側の手でペンを持ち、輪が到達した点に印を付けていくと、結果は楕円になる。この場合、2本指の位置が二つの焦点。「輪の長さマイナス指の間の幅」が一定なので、描かれる図形は上記の定義を満たす。使えるひもが なければ、適当な素材(例えばコンビニの袋)を分解して、よじって作ろう。

この「距離の和」というのは、具体的には 2a に等しい。実際、勝手な点 X として長軸の端の点 A を選ぶと、一方の焦点からそこまでの距離は a + c、他方の焦点からそこまでの距離は a − c、その和は 2a。「和が一定」という定義から、一カ所で測って 2a なら、どこで測っても 2a になる。今度は X として短軸の端の点 B を選ぶと、左右対称なので | SB | = | FB | = a となる。

楕円の離心率 zc/a に等しい(長半径を 1 として、焦点が中心からどのくらい離れているか)。従って:

直角三角形 OFB にピタゴラスの定理を適用すると b2c2 = a2 となり、(2.1) を使うと:

  1. b2 + (az)2 = a2
  2. b2 = a2 − (az)2
  3. b2 = a2(1 − z2) ……… (2.2)

一方、| OR | = a なので(赤い円の半径)、三角関数の定義から:

  1. OT = a cos E ……… (2.3)
  2. TR = a sin E ……… (2.4)

「楕円は円を縦方向に圧縮したもの」という発想を (2.4) に適用すると:

  1. TP = ba × TR = ba × a sin E
  2. TP = b sin E ……… (2.5)
  3. | TP |2 = b2 sin2 E

b2(2.2) の右辺で置き換えると:

  1. | TP |2 = a2(1 − z2) sin2 E
  2. | TP |2 = a2(sin2 E − z2 sin2 E) ……… (2.6)

STOT − | OS | に等しい。(2.3), (2.1) を使うと:

  1. | ST |2 = (OT − | OS |)2
  2. | ST |2 = (a cos E − az)2 = [a(cos E − z)]2
  3. | ST |2 = a2(cos2 E − 2z cos E + z2) ……… (2.7)

最後に、直角三角形 STP にピタゴラスの定理を適用しよう。(2.7), (2.6) を使うと:

  1. r2 = | ST |2| TP |2
  2. r2 = a2(cos2 E − 2z cos E + z2) + a2(sin2 E − z2 sin2 E)
  3. r2 = a2(cos2 E − 2z cos E + z2 + sin2 E − z2 sin2 E)

三角関数の基本性質(ピタゴラスの定理)から cos2 E + sin2 E = 1 であり、従って cos2 E = 1 − sin2 E でもある。だから z2 − z2 sin2 E = z2(1 − sin2 E) = z2 cos2 E。これらを使うと:

  1. r2 = a2(1 − 2z cos E + z2 cos2 E)
  2. r2 = a2(1 − z cos E)2
  3. r = ±a(1 − z cos E)

左辺の r は距離なので、右辺が負にならないように「±」の符号を選択する必要がある。a は長半径なので 0 以上。−1 ≤ cos E ≤ 1 であり、楕円の離心率は 0 ≤ z < 1。従って、マイナスを選ぶと右辺は負になってしまう。プラスを選ぼう:

(2.8) は、地球・太陽間の距離 ra, z, E で表したもの。これを使って未知数 r を消去すれば、Ev の関係が分かる…。

[3/3] 離角の関係

画像4 (14 KiB): 再掲。SPの距離をrとする。外側の赤い円の半径は、楕円の長半径aに等しく、内側の緑の円の半径は、楕円の短半径bに等しい。

図の直角三角形 TPS に注目すると、TP = r sin v。一方、(2.5) から TP = b sin E でもあるので:

(2.2) から:

(3.2), (2.8)(3.1) に代入すると:

  1. a(1 − z cos E) sin v = a1 − z2 sin E
  2. (1 − z cos E) sin v = 1 − z2 sin E
  3. sin v = 1 − z2 sin E1 − z cos E ……… (3.3)

真近点離角 v の正弦が、離心近点離角 E で表された!

真近点離角の余弦を離心近点離角で表す式も、簡単に作ることができる。(2.1) を使って:

  1. ST = OT − | OS |
  2. r cos v = a cos E − az
  3. r cos v = a(cos E − z) ……… (3.4)
  4. cos v = a(cos E − z)r

(2.8) を使って r を消去し、a で約分すると:

  1. cos v = a(cos E − z)a(1 − z cos E)
  2. cos v = cos E − z1 − z cos E ……… (3.5)

v の余弦が、E で表された!

(3.3), (3.5) を組み合わせると:

  1. tan v = 1 − z2 sin E1 − z cos E ÷ cos E − z1 − z cos E
  2. tan v = 1 − z2 sin Ecos E − z ……… (3.6)

v の正接が、E で表された!

(3.6) の右辺に E を入れて tan v を求め、tan v から角度 v を逆算することにより、Ev に変換できる。(3.3)(3.5) を使って、同様の変換を行うこともできる。とりあえず道はつながった。

三角関数は周期的に同じ値を取るので、どの式を使うにしても「象限が自動的に分からない」という小さな問題がある。例えば「tan v1 ですよ」と言われた場合、v = 45° かもしれないし v = 225° かもしれない。vE はだいたい同じ角度なので、常識で考えれば「180° 反対の位置」と間違うことはないが、ちょっと紛らわしい。

この問題を解決する一つの方法は、tan v ではなく tan (v/2) の式にすること。v−180° から +180° まで変化するとき、tan (v/2)−∞ から +∞ までの値を1度ずつ取る。これなら、一対一対応になり、曖昧さがない。副作用として v = ±180° の場合が計算しにくくなるが、v = ±180° の場合には、計算するまでもなく作図から E = ±180°

画像5: 原点Oを中心とする半径1の円を考える。点(−1, 0)をC、円周上の別の点(ここでは第1象限にあるとする)をPとし、CPは線分で結ばれているとする。Pからx-軸に下ろした垂線の足をTとし、∠TOPをθとする。線分CO、線分OPは、どちらも長さ1。

図のように、斜辺の長さが 1 の直角三角形 △OTP∠O = θ を考えてみよう(この図は、ケプラー方程式と関係ない一般的な状況を表している)。三角関数の定義から、隣辺 OT の長さ pcos θ、対辺 TP の長さ qsin θ

直線 OT 上の図の位置に、△COP が二等辺三角形になるように、点 C を置く。∠COP = 180° − θ なので、この二等辺三角形の2個の底角の和は θ、1個の底角は θ/2

直角三角形 △CTP∠C = θ/2 に注目すると、隣辺 CT の長さは 1 + p = 1 + cos θ、対辺 TP の長さは q = sin θ。従って、タンジェントの意味から:

この関係は、任意の角度 θ について成り立つ(詳細は別記事)。つまり (3.7) は、θ と無関係に常に成り立つ恒等式。ただし例外として、tan (θ/2) 自体が定義されないケースでは、(3.7) は意味を持たない。−180° ≤ θ ≤ 180° の範囲では、θ = ±180° が例外ポイントに当たる。前述のように、離角が ±180° の場合、角度の変換結果は分かり切っているので、式の上で ±180° が扱えなくても実際上あまり困らない。

(3.3), (3.5) を恒等式 (3.7) に代入すると:

  1. tan v2 = sin v / (1 + cos v)
  2. = [(1 − z2 sin E) / (1 − z cos E)] / [1 + (cos E − z) / (1 − z cos E)]
  3. = [(1 − z2 sin E) / (1 − z cos E)] / [(1 − z cos E + cos E − z) / (1 − z cos E)]
  4. = (1 − z2 sin E) / (1 − z cos E + cos E − z)
  5. = (1 − z2 × sin E) / [(1 − z) × (1 + cos E)]
  6. = 1 − z2 / (1 − z) × sin E / (1 + cos E) ……… (3.8)

この「×」の後ろの部分は、恒等式 (3.7) により tan (E/2) に等しい。一方、「×」の前の部分を整理すると:

  1. 1 − z2 / (1 − z) = 1 − z2 / (1 − z)2
  2. = √[(1 + z)(1 − z)] / [(1 − z)(1 − z)]
  3. = √(1 + z) / (1 − z)

従って (3.8) は、こうなる。

(3.9) を変形すると、逆変換の公式も得られる。

これらを使えば、象限で悩むことなく、「離心」近点離角と「真」近点離角を相互変換できる。


関連記事「春夏秋冬」は「夏秋冬春」より長いでは、ケプラー方程式や離角の変換の式を証明なしで使ってしまった…。この小さな記事は、そのギャップを埋めるもの。FN先生の楕円軌道とケプラー方程式正誤表)と、Calvert先生のEllipseを参考にした。

天文計算の典型的なパターンでは「平均」近点離角 M を「真」近点離角 v に変換したい。(3.9) はその変換プロセスの半分にすぎず、(3.9) を使うためには、その前段階として、まず「平均」を「離心」に変換する必要がある。それには、最初に戻って、次の形のケプラー方程式を解けばいい。

この部分については、数値的な計算は簡単だが、数学的な扱いが難しい…。

ともあれ (3.9) によって、少なくとも問題の半分は解決した。真の問題であるケプラー方程式も、一応「証明」できた。計算の順序を工夫することで、「三角関数の最初歩だけ知っていれば、ここまでは全部理解可能」という道筋が得られた。

追記: この記事は「倍角・半角などの公式を使わない」設定になっている。(3.7) については、「公式」として天下り的に使わず、図解によってそうなることを示した上で利用した。つまり「半角の公式」についての予備知識を仮定していない。

追記2: 続編「ケプラー方程式・2 エロい感じの言葉」を公開した(この記事の別解・発展)。

付録A 離角の逆変換

真近点離角と離心近点離角は、(3.9), (3.10) により、どちらからどちらへでも変換できる。その意味で既に逆変換は可能だが、ここでは (3.3), (3.5), (3.6) の逆バージョン(E の正弦を v で表す式など)を作る。

  1. OT = | OS | + ST
  2. a cos E = azr cos v

(2.8) を使って r を消去すると:

  1. a cos E = az + [a(1 − z cos E)] cos v
  2. cos E = z + (1 − z cos E) cos v
  3. cos E = z + cos v − z cos E cos v
  4. cos E + z cos E cos v = z + cos v
  5. cos E(1 +  z cos v) = z + cos v
  6. cos E = z + cos v1 + z cos v ……… (4.1)

ところで、(4.1) を使うと (2.8) から E を消去できる:

  1. r = a(1 − z cos E) ……… (2.8)
  2. = a(1 + z cos v1 + z cos v − z × z + cos v1 + z cos v)
  3. = a(1 + z cos v − z2 − z cos v1 + z cos v)
  4. r = a(1 − z2)1 + z cos v ……… (4.2)

この式は、地球の真近点離角 v を、太陽・地球間の距離 r に対応させている。…ここでは使わないが、vr を組み合わせると、地球位置の「極座標表示」になる。(2.8)r を表す式だが、それは離心近点離角 E を使った式で、太陽を「中心」とする式(v を使った式)ではなかった。

(3.1), (3.2) から:

この左辺に (4.2) を代入し、両辺を a で割ると:

ゆえに:

(1 − z2) / 1 − z2 = 1 − z2 なので:

(4.3) を得る別の方法: (4.1) を使って次のように機械的に計算して、両辺の平方根を考えてもいい。

  1. sin2 E = 1 − cos2 E
  2. = 1 − [(z + cos v) / (1 + z cos v)]2

(4.3), (4.1) を組み合わせると:

(4.3), (4.1) を恒等式 (3.7) の右辺に代入すると:

  1. tan E2 = [1 − z2 sin v / (1 + z cos v)] / [1 + (z + cos v) / (1 + z cos v)]
  2. = [1 − z2 sin v / (1 + z cos v)] / [(1 + z cos v + z + cos v) / (1 + z cos v)]
  3. = [1 − z2 sin v] / (1 + z cos v + z + cos v)
  4. = [1 − z2 × sin v] / [(1 + z) × (1 + cos v)]
  5. = 1 − z2 / (1 + z) × [sin v / (1 + cos v)] ……… (4.5)

×」の後ろの部分は、恒等式 (3.7) により、tan (v/2) に等しい。「×」の前の部分は:

  1. 1 − z2 / (1 + z) = 1 − z2 / (1 + z)2
  2. = √[(1 + z)(1 − z)] / [(1 + z)(1 + z)]
  3. = √(1 − z) / (1 + z)

従って (4.5) は次のように整理され、再び (3.10) が得られる:

v から E を求めたい場合、一般論としては (3.10) を使う方が便利。(4.4) を使った場合、象限が自動決定されない。(4.4) の分母には、変な零点もある。普通の数学の範囲外(プログラミング言語の領域)だが、atan2 というツールがあれば、(4.4) を便利に使うこともできる。

極座標表示を先に導入して、(4.2) から (3.5) を導いている文献もある。本文でやったように、全ての式は極座標と無関係に自然に導出され、そこから逆に(必要なら)極座標表示を導くこともできる。その方が最小構成的で明快だろう。

ケプラー方程式(微積・三角公式を使わないアプローチ) > 作成メモ・更新履歴

  1. 2017年12月12日: 「春夏秋冬」は「夏秋冬春」より長いの補足として作成開始。
  2. 2018年1月14日: 初版公開。
  3. 2018年1月15日: 誤字修正。(4.5) の下の式で、(1 + z)2 の平方根が (1 + z2) の平方根になっていた。
  4. 2018年1月16日:
    1. (4.2) を得る方法を少し簡単化。初版では (3.4), (4.1) を組み合わせていた。(2.8), (4.1) を組み合わせた方が簡潔だった。
    2. 本文末尾に追記。
    3. 表現の細部の調整(約5カ所)。
  5. 2018年1月21日: 表現の細部の調整。
  6. 2018年1月28日: 表現の細部: 「自由に変換できる」→「相互変換できる」。続編ケプラー方程式・2 エロい感じの言葉を公開したのでリンク設定。
  7. 2018年2月4日: 表現の細部: 「ひもで輪を作って」→「ひもか糸で輪を作って」。

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ケプラー方程式・2 エロい感じの言葉

2018年 1月28日
記事ID e80128

ケプラー方程式(微積・三角公式を使わないアプローチ)」の別解・発展。

「楕円と離心率」の別解

画像6 (14 KiB): 画像4とほぼ同じだが、それに加えて、Pから短軸に下ろした垂線の足をUとする。PUとORの交点をKとする(Kの位置は、緑の円の上になる)。Kから長軸に下ろした垂線の足をLとする。短軸の端の二つの点のうち、長軸の上方にあるものをB、下方にあるものをB′とする。

1. 図において LK = b sin E なので、もし TP = LK が示されるなら、TP = LK = b sin E となって、(2.5) が得られる。

TP = LK を示すのは難しくない。「楕円は円を圧縮したもの」という性質から、TPTR b a  。一方、直角三角形 OKL△ORT と相似で斜辺の長さが b a  。従って LKTR b a  。ゆえに TP = LK

1.1 代わりに、直角三角形 OKU に注目してもいい。OU∠OKU = E の対辺なので、同じ結論が得られる。

1.2 上記二つの方法に共通の問題点。「P を通る水平線と OR の交点は、内側の円周上にある」ということは、自明ではない。それを言うためには TP = LK を示せば十分だが、そのときどうせ TR : TP = a : b という性質を使うのなら、その性質を TR = a sin E という事実(一目瞭然)に直接適用した方が、話が早い。「楕円と離心率」の本文では、そうしている。

2. 円ではない楕円には、二つの焦点のそれぞれに対応する準線という直線が(同一平面上に)あって、準線は次の性質を持つ。

商が定義されるのだから、楕円上の任意の点について | Xδ | ≠ 0 のはずで、準線と楕円は決して交わらない。短軸の両端 B, B′ のどちらから見ても「F までの距離」は同じなので、B, B′ のどちらから見ても「δ までの距離」は等しいはず。「準線は楕円の外側の離れた場所にあって、短軸と平行」ということになる。

2.1 楕円の中心 O から準線までの距離 h = | Oδ | は、B から準線までの距離 | Bδ | に等しい。| BF | = a なので:

  1. z = | BF | | Bδ | = a h
  2. | Oδ | = h = a z  ……… (5.1)

2.2 この関係を利用すると、(2.8) が簡単に得られる。太陽のある焦点 S に対応する準線を δ として:

  1. | Pδ | = | Tδ |
  2. z = | PS | | Pδ | = r | Tδ |
  3. r = z| Tδ | = z(| Oδ | − a cos E) = z( a z − a cos E) = a(1 − z cos E) ……… (2.8)′

この方法は一見エレガントだが、「離心率 z0 の場合」を扱えないという欠点を持つ。つまり、円と楕円で場合分けする必要がある。z = 0 なら (2.8) は自明なので、場合分けして証明するのは簡単だけれど、「円は楕円の一種ではない」「分けて考える必要がある」というのは納得がいかない…。肯定的に考えると、このモヤモヤは、幾何学の枠組みを見詰め直すモチベーションを与えてくれる。

2.3 (5.1), (2.1) から:

楕円の準線は短軸に平行な直線で、楕円の中心から見て上記の距離の場所にある。

逆にそのことを仮定して「楕円の方程式」などを利用すると、上記の性質が示される: 円ではない楕円上の任意の点について、「そこから焦点までの距離」と「そこから準線までの距離」の比は一定で、その比は離心率に等しい。証明は難しくないが、ここでは事実の紹介だけ。

「離角の逆変換」からの発展

3.(4.2) の分子を p と置くと:

p = a(1 − z2) は楕円ごとに決まっている定数。(5.3) の分母が大きければ大きいほど、地球は太陽に近く、分母が小さければ小さいほど、地球は太陽から遠ざかる。離心率 z を定数とすると、分母の大小は cos v にのみ依存し、cos v はもちろん v = 0 のとき極大、v = π (=180°) のとき極小。前者は地球が近日点きんじつてん W を通る瞬間、後者は地球が遠日点 A を通る瞬間に当たる。それらの瞬間における太陽・地球間の距離は、それぞれ次の通り。

逆に上記を出発点とすると、

  1. 2a = | AW | = p / (1 + z) + p / (1 − z)
  2. = [p(1 − z) + p(1 + z)] / [(1 + z)(1 − z)]
  3. = 2p / (1 − z2)
  4. a = p / (1 − z2) ……… (5.4)
  5. p = a(1 − z2) ……… (5.5)

となって、(4.2) の分子が得られる。さらに:

  1. c = a − | SW |
  2. = p / (1 − z2) − p / (1 + z)
  3. = [p − p(1 − z)] / (1 − z2)
  4. = pz / (1 − z2)

これと (5.4) を組み合わせると c = az となる。つまり、(5.3) を出発点として、離心率の式 (2.1) を導くこともできる。

4. p は目立たない存在ながら、楕円のいろいろなパラメーターと結び付いている。一体何者だろう。

画像7 (11 KiB): 楕円の「短半径」は、短軸の長さの半分。「半通径」は、通径(焦点を通り、長軸に直交する弦)の長さの半分。長軸の端、短軸の端、焦点Sを通る通径の端をそれぞれA, B, Dとし、もう一つの焦点をFとする。

(5.3) によれば、pv = π/2 のときの r に等しい。「楕円の焦点を通り、長軸と直交する直線」が楕円と交わる2点について、その2点間の距離を漢語で通径、ラテン語で lătus rectum という。p は通径の半分に当たり、半通径と呼ばれる。イメージ的には「短半径の焦点バージョン」。

latus rectum って、なんかエロい雰囲気の言葉だな…。英語圏の人は、そう感じるようだ(笑)。子ども向けのページ Conic Sections広告あり)には「下品な(エッチな)言葉じゃありませんよ!」と注釈が付いている。College Algebra (2013) の p. 507 にも「これは真面目な数学用語」という趣旨の脚注が付いている。

rectum は、ラテン語では「真っすぐな、正しい」という意味の普通の言葉だが、英語では「直腸」つまり「お尻の穴の奥の場所」を指すので、学生は笑ってしまうのだろう。日本語で言えば「完全変態」とか「虚根」みたいな用語かな…。そういう目で見ると lătusānus に似ている。

長軸・短軸が楕円の大黒柱のようだが、力学的には中心より焦点の方が重要(太陽もそっちにいる)。焦点につながっている通径の方が、実は短軸より「偉い」のかもしれない。楕円の通径は短軸に平行なので、当然、準線とも平行。

5. 半通径の長さ | SD | = p を直接計算してみよう(画像参照)。直角三角形 FSD において、| FS | = 2c = 2az| SD | + | DF | = 2a なので | DF | = 2a − p。従って:

  1. (2az)2 + p2 = (2a − p)2
  2. 4a2z2 + p2 = 4a2 − 4app2
  3. 4ap = 4a2 − 4a2z2 = 4a2(1 − z2)
  4. p = a(1 − z2)

再び (5.5) が得られた。

半通径 p は長半径 a (1 − z2) 倍。一方、(3.2) によると、短半径 ba 1 − z2 倍。従って、abp は次々と 1 − z2 倍の割合で短くなり、下記の関係が成り立つ。

  1. a : b = b : p
  2. ap = b2
  3. p = b2/a ……… (5.6)

ケプラー方程式・2 エロい感じの言葉 > 更新履歴

  1. 2018年1月28日: 初版公開。
  2. 2018年2月4日: 1.2 の分かりにくい表現を改善。
    1. (旧) どちらの方法でも「P を通る水平線と、斜辺 OR の交点 K が、ちょうど内側の円周上になる」という部分が、自明ではない。どうせ TR : TP = a : b という性質を使うのなら、TR = a sin E という事実(一目瞭然)にそれを適用すれば、直ちに TP = b sin E を示すことができる。
    2. (新) 上記二つの方法に共通の問題点。「P を通る水平線と OR の交点は、内側の円周上にある」ということは、自明ではない。それを言うためには TP = LK を示せば十分だが、そのときどうせ TR : TP = a : b という性質を使うのなら、その性質を TR = a sin E という事実(一目瞭然)に直接適用した方が、話が早い。

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